2023.04.05

マンションの老朽化が抱える課題

 

はじめに

前記事で旧耐震基準のマンションは約103万戸あり、今後も老朽化したマンションは急増していく見込みとなっていると述べた。本記事では老朽化したマンションが抱える課題を列挙したい。

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01.物理的な劣化

01.1 設備の劣化

老朽化したマンションの顕在化しやすい問題として、設備の劣化がある。

給水管や排水管の設備も取り替える必要がある場合がある。具体的には錆で赤水が出ることや、シャワーの水圧が低いこと、排水管が詰まりやすくなることが挙げられる。国土交通省の調べでは(下図参照)、老朽化したマンションの問題の多くが、給排水管の老朽化による漏水や漏水からの雨漏りだということが分かる。ただ古いマンションでは、給排水管をコンクリート躯体の中に埋設・隠蔽してしまっているものも多く、こうした場合、配管を取り替えることが容易ではないことがある。

築年数による問題発生率の比較
出典:国土交通省HPより参照

次に電気容量の問題がある。マンションが建設された当時と比べると、今日では家庭における電気消費量は格段に増加している。複数の家電製品を同時に使った場合にヒューズがとぶなど、生活上の支障を来すことがある。課題として、築 30 年程度を経過したマンションにおいては、マンション全体で有している受電設備の容量が少なく、マンション内の全住戸の定格電力を挙げていくことは難しい場合があることだ。

また、エレベーターがマンションに無いという問題もある。古いマンションでは5階建て以下の建物でエレベーターが設置されていないものが多数存在した。購入当初はエレベーターが無くとも生活が出来た場合でも、住民の高齢化が進むことにより、生活利便性が著しく下がることになる。既存の建物にエレベーターを追加設置することは費用的に現実的ではないことが多く、古いマンションが抱える大きな問題である。

今日では当たり前になったバリアフリーの考え方も、古いマンションでは想定されていない場合もある。手すりなどは後から設置できる場合もあるが、大きな段差などは解消できないこともあり、住民の利便性を損ねる。

01.2耐震性能の劣化

建築物の耐震性に関する法令は、過去の震災の教訓等を基に何度か見直しが行われているが、近年における最も大きな見直しは 1981(昭和 56)年の建築基準法改正である。つまり、1981年以前に作られたマンションでは現在求められる耐震性能を満たしていない場合がある。

下図のように、旧耐震では震度5程度の「中地震に損傷しない程度」の設計がされていない場合があり、震度6強から7に達する程度の大規模地震についての規定はなかった。一方、新耐震基準では震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊・崩壊は免れるといった基準を義務付けている。このように旧耐震制度下で作られたマンションは建替え・耐震補強を検討する必要がある。

旧耐震の構造イメージ
出典:国土交通省HPより参照

また構造の問題もある。鉄筋コンクリート造の建築物は柱や梁の他に耐震壁と呼ばれる壁によって構造を支えているものが一般的だが、古いマンションではピロティのように開放された空間や、壁とつながっていない独立柱が多く耐震壁が少ない場合がある。こういった構造では地震に対する安全性に問題のある場合がある。

建築材料の劣化も耐震性能へ影響する。外壁や柱、梁等にひびや欠け、雨漏りや、上階からの漏水がある場合、材料劣化が進んでいる場合もあるため、定期的な検査が必要になる。

マンションの2階廊下部分が崩落した事例
出典:国土交通省HPより参照

01.3 防火・避難安全性能の劣化

マンションのほとんどはRC造及びSRC造の耐火建築物であることが想定されるため、建設時に法令に適合しているならば、耐火性については、一定の性能を有していると考えられる。ただ、避難に関しては旧耐震基準のものでは、現法と適合していない場合もある。

例えば共用廊下や階段の幅員については、火災時の避難が円滑にできるように階段や廊下の幅員が定められており、現行の建築基準法では共用階段で 900 ㎜、共用廊下で 1200㎜(片廊下住棟の場合)と定められています。このため、現状でこれらを下回るマンションにおいては、現行の法令以前に建設され、現行の法令に適さないマンションである。

01.4 アスベストの存在

アスベスト(石綿)は、昭和40年代以降、建物の耐火被覆、吸音、断熱用の吹付材として大量に使用されてきた。ただこれを吸引すると肺に悪質な後遺症を残すことが判明し、昭和50年頃には吹付作業が原則禁止され、平成18年にはアスベストを含む建材が禁止になった。それ以前に作られたマンションには、建築物にアスベストが使用されている場合があり、リノベーションや解体に際して取扱に注意を要する。

02.機能的な劣化

古いマンションでは物理的な劣化だけでなく、マンション機能として劣化や陳腐化を起こしていることもあり、市場価値として低くなる場合がある。

02.1 階高の問題

近年の新築マンションと比べ、建築後相当の年数が経過したマンションにおいて陳腐化のみられる一つの要素として、階高が挙げられる。階高寸法(天井方向の高さ)にゆとりのないマンションでは、居住する上での圧迫感を感じさせることに加え、住戸内のリフォームの際にもバリアフリー(段差解消)のための床の高さ処理や水廻り位置の変更の際の床下排水管の勾配設定等に大きな制約を受けることになる。

02.1 階高の問題

近年の新築マンションと比べ、建築後相当の年数が経過したマンションにおいて陳腐化のみられる一つの要素として、階高が挙げられる。階高寸法(天井方向の高さ)にゆとりのないマンションでは、居住する上での圧迫感を感じさせることに加え、住戸内のリフォームの際にもバリアフリー(段差解消)のための床の高さ処理や水廻り位置の変更の際の床下排水管の勾配設定等に大きな制約を受けることになる。

02.2 遮音性の問題

マンション居住の大きなトラブルとして、上下階や隣戸との騒音のトラブルが挙げられる。遮音性が低い古いマンションでは壁が薄く、上階や隣戸のトイレの水を流す音が聞こえる場合もあり、住宅価値として低く見られる場合がある。

02.3 気密・断熱性の問題

古いマンションと新築マンションの性能の大きな違いとして、気密・断熱性能等に関する省エネルギー性能も挙げられる。昭和30~40 年代に建設されたマンションについては、外壁や屋根等への断熱材の設置やサッシの性能が今日に比べ不十分なものもあり、これらの居住性への影響として住戸内へのすきま風や結露などが発生することもある。

03. マンション居住者の高齢化・非居住化の問題

古いマンションでは区分所有者の高齢化・非居住化(賃貸・空き住戸化)が進行することが下図でも示されている。

マンション居住の状況
賃貸戸数割合
出典:国土交通省HPより参照

高齢化や賃貸化すると管理組合の役員の担い手不足や、総会運営や集会の議決が困難になるなどの課題を抱えていることがある。

管理組合が上手く機能しないと上述の設備の劣化などにおいて、適切なタイミングで修繕の合意形成を進めることができず、マンション価値が下がってしまうことがある。

空き家による現在の問題と将来の危惧
出典:国土交通省HPより参照

空き家の問題として、人が住まなくなることによる建物の老朽化の進行が進むこと、修繕積立金・管理費不足による適切な修繕計画が実行できないことなどが挙げられる。

また、高齢化と空室化したマンションでは区分所有者にもしもの時があった場合、気付かれることが遅れてしまうなど、マンションコミュニティの維持が難しい問題も抱えている。

空き家戸数割合
出典:国土交通省HPより参照

04.まとめ

以上のように、老朽化したマンションでは「物理的な劣化」と「機能的な劣化」が進んでいる場合が多い。こうした劣化を防ぐために、定期的な修繕や改修が求められる。一方、例えば建物の構造的な課題を解決するために修繕などでは対応できない、もしくは多額の費用が掛かる場面がある。その際に、前記事で取り上げたようなマンション建替えや敷地売却制度を活用するという選択肢が出て来る。

各管理組合として、修繕や改修が良いのか、もしくは建替えを検討した方が良いのかを次の記事で比較検討したい。

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