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2024.06.18
脱炭素社会とは、温室効果ガスの排出量の「実質ゼロ化」を目指す社会のことです。日本を含め、諸外国で脱炭素化の取り組みが行われています。
この記事では、脱炭素社会の概要や背景、課題について詳しく解説します。現状の取り組みもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
脱炭素社会とは、地球温暖化などにつながる温室効果ガスの排出量の「実質ゼロ化」を目指す社会のことです。2020年の10月、政府が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを目指す宣言をしました。
なかでも、地球温暖化への影響が大きい二酸化炭素(CO2)の削減を重点課題とし、排出量の削減・排出した二酸化炭素の回収によってゼロ化を目指す意味合いで「実質ゼロ」といった言葉が使用されています。
脱炭素社会の前に主流だったのは、低炭素社会です。温室効果ガスの実質ゼロ化を目指す脱炭素と比較して、低炭素社会は温室効果ガス(大きい割合を占めるCO2)の排出量を吸収量と同等(現状の半分以下)まで低くすることで温暖化対策を目指した点が異なります。
ただし低炭素社会では、発展途上国の産業の発展などが影響して温暖化対策の効果は十分に得られませんでした。その状況を打破するため、脱炭素社会の実現を目標にして、世界的に動き出したというわけです。
脱炭素社会は、特に二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロ化する社会を指しています。
一方、カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指します。つまり、メタンガスやフロンガスなどもカーボンニュートラルの対象です。
ただ、この二つはほぼ同じ意味合いとして使われることが多く、また厳密な定義があるわけではありません。
次に脱炭素社会がなぜ必要なのか、背景について詳しく解説します。
脱炭素が注目される理由としてまず見えてくるのは地球温暖化の進行による深刻な影響です。世界の平均気温は工業化以前(1850〜1900年)と比較して上昇傾向にあります。
化石燃料の使用により排出される大量の二酸化炭素(CO2)が温室効果ガスの増加を招き、地球の平均気温を上昇させています。この気温上昇は、異常気象の頻発や海面上昇、生物多様性の喪失など、生態系や人間社会に多大な影響を与えています。
また、温室効果ガスは気候変動の原因ともされており、気候変動に伴って豪雨や猛暑などのリスクが高まることが予想されています。日本においても、農林水産業や自然の生態系、自然災害、健康などに影響を及ぼすと指摘されています。
脱炭素社会を目指す背景には、京都議定書やパリ協定での決定もあります。
京都議定書とは、1997年に京都で開催された地球温暖化防止京都会議にて採択された、温室効果ガス(二酸化炭素やメタンなど)の先進国の排出削減について法的拘束力のある数値目標を定めた文書のことです。
一方でパリ協定は、2015年にパリで開催された会議であり、京都議定書の後継として2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みが定められています。
パリ協定では現在、以下のような世界共通の目標を掲げています。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
- できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
日本においてもパリ協定の締結国となっているため、国際的な枠組みで脱炭素社会に向けて取り組みを行っています。
ところが、2024年6月 世界気象機関(WMO)の報告書によると、今後5年間のうち少なくとも1年は、世界の年間平均気温が1.5℃を超える可能性が80%あると発表しました。
5年間の平均気温は1.1~1.9度高くなる可能性が高く、1年単位ではなく5年間の平均で1.5度を超える確率は47%もあるとの予測が出ました。
もっとも暑いとされた2023年の記録が5年以内に更新される可能性が86%であると指摘しました。(2023年は1.45度上昇)
緑は、1850~1900年の世界平均気温を基準にした気温上昇のグラフ 右下茶色は、1.5度を超える上昇予測確率のグラフ
今後も、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指した取り組みが予想されるというわけです。
脱炭素社会の実現を目指すとはいっても、いくつか課題があるのが現状です。ここでは、脱炭素社会実現に向けての課題である「化石燃料の依存度」と「再生可能エネルギーの普及」に関して詳しく解説します。
2023年2月に公表された資源エネルギー庁の情報をみると、日本のエネルギー産業は、約83%が石炭・石油・LNG(液化天然ガス)などCO2を排出する化石燃料で占められていることがわかります。
なかでも石炭と石油は、液化天然ガスよりも二酸化炭素を排出しやすいのが特徴です。その点も含め、現状における化石燃料への依存度の高さが脱炭素社会の実現を図る上での課題とされています。
温室効果ガスを発生させる化石燃料への依存度の高さを解消するため、現在では太陽光発電などのクリーンな再生可能エネルギー発電への転換が求められています。とはいえ、日本では再生可能エネルギーで現在のエネルギー産業をまかなえるほど、供給量や安定性が十分とはいえません。
また、比較的クリーンで安定した供給が見込まれる原子力発電においても、2010年のときに比べて割合は下がっています。災害時のリスクや放射性物質の処理など課題が多く残されている現状です。
続いては、社会が脱炭素社会の実現に向けてどう取り組んでいるか詳しく解説します。弊社の取り組みに関しても、あわせてご覧ください。
日本政府は、2050年までにカーボンニュートラル、すなわち温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げています。
2023年現在の日本では2050年の脱炭素社会実現に向け、5年間の集中期間を設けて政策を総動員し、100カ所前後の脱炭素先行地域を創出して対策しています。取り組み内容の例は、以下の通りです。
5年間の集中期間での結果をもとに、2030年頃に全国に脱炭素を伝搬させ、2050年を待たずに脱炭素化した地域社会の実現を目指すというのが社会の取り組みです。
企業は脱炭素社会の実現において重要な役割を担っています。
温室効果ガスの削減には省エネ技術の導入や製品のエコデザインが効果的です。また、グリーン購買の推進も欠かせません。サプライチェーン全体での脱炭素化に向け、取引先との協力を強化し、環境負荷の少ない原材料調達から製造、配送、廃棄までの全プロセスを見直す必要があります。
たとえば、CO2排出が日本の総排出量の約16%を占めている自動車を、電気自動車(EV)などのゼロエミッション車両(ZEV)へ転換する、自社で太陽光発電を導入するなどがあげられます。
環境問題に対する社会の関心が高まる中、企業は気候変動リスクの管理と報告を透明に行い、持続可能性を重視した経営を推進することが期待されています。
企業が脱炭素化に取り組むことは、ブランド価値や競争力の向上につながるだけではなく、補助金の申請や、排出量削減自体が経済的なメリットになる可能性もあります。
弊社では、省エネに関するさまざまな事業を展開しており、さまざまな角度から脱炭素化実現に向けてのサポートをしています。
たとえば工場・事業場における脱炭素化取り組み推進事業(SHIFT事業)では、支援機関として「削減目標設定・計画策定」の実施・補助金受給のサポートを行っています。
加えて、省エネ設備導入や補助金申請コンサルティングの実績から培ったノウハウをもとに精度の高い設備更新の提案や、設備更新の補助やCO2排出量の算定などのサポートを実施することも可能です。
質の高いサービスを利用して脱炭素化を希望する事業者の方は、豊富な実績を有する弊社にぜひご相談ください。
日本以外の諸外国では、脱炭素に向けてどのような動きをみせているのでしょうか?ここでは、脱炭素における社会の動きを詳しく解説します。
脱炭素に向けた各国の動向について比較していきましょう。
国名 |
2030年 |
2050年 |
日本 |
2013年度比で46%減、さらに50%の高みに向けて挑戦 |
カーボンニュートラル |
EU |
1990年比で最低でも55%減 |
|
イギリス |
1990年比で最低でも68%減 |
|
アメリカ |
2005年比で50~52%減 |
|
中国 |
2030年までにCO2排出を減少 |
カーボンニュートラル(2060年) |
また、国によって目標達成の手法を検証していたり脱炭素実現に向けてエネルギー構成のシミュレーションをしたりしています。なかには、具体的な戦略が示せていない国もありますが、いずれも目標を掲げて取り組んでいる傾向にあります。
脱炭素化に向けた諸外国の具体的な対策として、こちらの画像をご覧ください。
どの国においても地球温暖化対策を成長戦略として捉えています。コストや制約として捉えずに、グリーン分野の研究開発支援や先端技術の導入支援などを行い、国としての成長を目指しているのが特徴です。
この記事では、脱炭素社会がどういったものか詳しく解説しました。
脱炭素社会は、温室効果ガスの実質ゼロ化を目指す社会のことです。低炭素社会で十分な効果を得られなかったため、2015年のパリ協定にて脱炭素化が決定されました。
日本が脱炭素化を目指すための課題は、化石燃料への高依存や再生可能エネルギーの普及などいくつも残されています。
そういった社会を目指すためには、国や企業で取り組むだけではなく、私たちの生活に脱炭素の取り組みを浸透させていく必要が高まってきています。
私たち一人ひとりの選択がますます重要になってきているのです。
すべての人にとって住みやすい地球を守るために、自治体や個人でできることに取り組んでいきましょう。
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