2024.11.27

容量市場・容量拠出金とは? 電気代への影響、目的や仕組みについてわかりやすく解説

将来に向けて、安定的な電力供給を確保するための手段として、容量市場が導入されました。そして、安定的な電力供給をおこなう発電事業者に対して支払う報酬のことを容量拠出金とよびます。

そもそも容量市場とは何か、そして容量拠出金とは何なのか、誰が負担しなくてはいけないのか、についてわかりやすく説明していきます。

1.容量市場の基本を解説!

1.1容量市場とは何か?

容量市場とは、将来(=4年後)の電力供給力を取引する市場です。
実際に発電された電力量ではなく、4年後に供給が可能な状態の電源を確保するための取引をおこないます。

出典:経済産業省 「容量市場の見直しに向けた検討状況」

1.2.卸電力市場との違い

容量市場は、前述した通り「将来の電力供給力」を取引している市場で、
需要に対する発電容量(kW)を提供しています。

一方、卸電力市場は「今」作っている電力量(kWh)を取引している市場です。

1.3.容量市場が生まれた背景と目的

容量市場が生まれた背景には、2016年4月に開始された電力の全面自由化が大きく関係しています。

電力の売買が自由になったことにより、新規事業者が多く参入しました。市場価格も時間帯によっては低下したため、売電事業者の収入が減少する懸念が出てきました。

現在、電力は太陽光発電などの再生可能エネルギーだけでは、安定的に発電をすることは困難です。発電を安定させるには、火力発電所による調整が不可欠ですが、収入が減少すると、老朽化した施設の補修が不可能になったり、建設もできなくなったりするなど、安全な運営が難しくなってきました。

経済産業省の資料によると、2019年の自由化後、火力電源の廃止実績は増加傾向にあります。そして今後10年間の火力供給力は減少傾向という現実があります。

出典:経済産業省 「容量市場の見直しに向けた検討状況」

そこで、電気事業者の安定した事業運営、そして消費者に安定的に電気を供給することを目的として、すでに海外では浸透している容量市場を日本でも2020年にスタートさせたのです。

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1.4.容量市場の仕組みとは?

取引されるものは「4年後の電力の供給力」です。
まず、4年後の電力の最大需要を電力広域的運営推進機関(略称:広域機関)が算定します。もちろん、自然災害や気象等のリスクを考慮して、4年後にどのくらい調達すればよいかの目標を設定し、オークション方式で募集します。

落札した発電事業者は、電力広域的運営推進機関から「拠出金」を受け取り、将来の電源の供給を維持できるよう、必要な管理をおこないます。

参考 電力広域的運営推進機関

1.4.1.価格決定の方法とその影響

オークションで入札された価格は、安い順から落札されます。落札されたもののうち、もっとも高い価格を「約定価格」とします。この価格はすべての落札された電源に適用されます。

2.容量拠出金とは?

容量拠出金とは、安定的な電力供給を確保するために広域機関に対して支払うお金です。
では、その「拠出金」は誰が負担しているお金なのでしょうか。

2.1.容量拠出金は誰が支払う?

容量拠出金は、小売電気事業者および、一般送配電事業者、配電事業者が電力広域的運営推進機関に支払います

参考 電力広域的運営推進機関

2024年度から、小売電気事業者は約定金額で定められた金額を支払う義務があります。そしてその費用は電気料金に転嫁されます。つまり、一般家庭も含めた電力を利用するすべての人が容量拠出金を負担する必要があるということです

具体的な負担金額は一律で負担するのではなく、入札によって割り振られた各社のシェアを軸に負担額を按分する仕組みです。そのため、各小売電気事業者によって異なります。また、消費者に求める負担率も各小売電気事業者によって計算方法が異なりますので、不明のことがあれば、契約している小売電気事業者にお問い合わせください。

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2.2.電気料金の値上げは避けられないのか?

残念ながら、容量市場の導入にともない、特に容量拠出金も電気代に反映されることで、値上げは避けられないと考えられています。
電気料金は、需要が変動する中でその影響を非常に受けやすい構造になっています。

しかし容量市場は、その影響をできるだけ少なくする目的もあるため、電気代が急騰するということは減る可能性があります。こちらは、次の章「容量市場のメリット・デメリット」にて解説します。

3.容量市場とのメリット・デメリット

電力の売買が自由になったことは、消費者にとっては選択肢が増え喜ばしいことですが、それにより競争力が増し、小売電気事業者にとっては事業の不安定化に繋がりました。さらに、今後ますます電力需要が高まるといわれており、安定的に電力を供給することができる環境を作ることは非常に重要な課題でした。

そういった環境の中で「将来、電力を供給できる力」を取引する「容量市場」は、電力の安定化として期待される一方、デメリットも存在します。容量市場の導入によるメリットとデメリットを整理しましょう。

3.1.容量市場のメリット

容量市場のメリットは、安定的に電力を供給できる、ということ以外に下記の2点が挙げられます。

・再生可能エネルギーの主力化促進が可能になる
・電気料金の変動を抑えられる

3.1.1.再生可能エネルギーの主力化促進が可能になる

現在の日本の発電実績は、約7割超が火力発電に頼っています。
火力発電は安定した電力供給を容易におこなえるため、電力の調整弁としての役割を果たしていますが、その一方で二酸化炭素の排出量が多いことが課題として挙げられています。

出典:資源エネルギー庁 2024年3月 統計表一覧 発電実績より作成

また設備自体の老朽化も指摘されています。建て替え・改修には長い時間がかかることはもちろん、コストもかかります。

そんな中で、再生可能エネルギーを導入しようとしても、導入コストの問題が解決できずなかなか推進できない、という現状がありました。

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しかし、容量市場は「将来の電力供給能力」に焦点をあてられるため、将来の電力確保のために新電力などの再生可能エネルギーを主力化させることにコストをかけることが可能になるのです。

「今」ではなく「将来」を取引しているからこそ、「将来の電力」のための電源投資を適切なタイミングでおこなうことができるようになります。

3.1.2.電気料金の変動を抑えられる

電気料金は、需要と供給のバランスが崩れると大きく変動します。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻が起きた際は、電気代に含まれる「電力量料金」で調整し、電気料金が上がりました。

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しかし、容量市場は、必要な電力をあらかじめ確保しているため、需要が急に増えたとしても供給力不足を抑制することができます。結果、市場価格や電気料金が急騰することを防ぐ仕組みとして寄与するといわれています。

3.2.容量市場のデメリット

2020年に開催された容量市場の第1回オークションにおいて、予想外に落札価格が高騰しました。その時の約定価格は14,137円/kWで、広域機関の設定した需要曲線の上限額でした。この約定価格に従って容量拠出金を試算すると、約定総額は1兆5,987億円にも及び、事業者によっては大きなインパクトとなる金額です。

その後第2回のオークションでは約定価格は落ち着きましたが、その後は徐々に約定結果は上がり続けています。

メインオークション約定結果(1kWあたり)
第1回(2024年度) 14,137円
第2回(2025年度) 3,108円
第3回(2026年度) 5,226円
第4回(2027年度) 7,847円

出典:電力広域的運営推進機関 容量市場メインオークション約定結果より

2024年1月に発表された第4回のオークションでは、前年度の平均価格から約1.5倍になるという結果でした。

ここからデメリットは下記の2点が挙げられます。

・大手電力会社と、小規模発電事業者の格差拡大
・4年後の発電容量を決めることが難しい

3.2.1.大手電力会社と、小規模発電事業者の格差拡大

容量市場で容量確保契約金を受け取れるのは発電能力をもつ事業者です。一方、発電設備を持たない小規模発電事業者や再生可能エネルギーを主力とする事業者などにとっては、容量市場の恩恵を受けにくいのが現状です。
これは、すでに大規模な発電設備をもつ大手電力会社には有利な構造のため、大手電力会社と小規模発電事業者の格差が拡大すると指摘されています。

また、発電設備を持たない小売電気事業者は拠出金を支払う立場のため、約定価格が高値になると、その支払いが非常に負担となります。

せっかく電力自由化によって市場の多様化や競争が始まったのに、その動きを止めてしまうおそれがあるのです。

3.2.2.「4年後」の発電容量を決めることが難しい

前述したオークションの結果が大きくばらついていることからも分かる通り、昨今の不安定な環境下において「4年後」を見通すことは非常に困難といえるでしょう。

4.まとめ

これまで、容量市場と容量拠出金制度が電力市場に与える影響について解説をしてきました。

容量拠出金についてのとらえ方は各小売電気事業者によって異なりますので、より納得のできる電力会社を比較・選択することも一つの方法でしょう。

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安定的な電力供給を目指した新しい形は、まだまだ多くの課題が指摘されているのが現状です。

しかし、将来の発電供給力を確保し、適切なタイミングで改修や投資をうながすためにスタートした「容量市場」。安定的な電力供給を進めるためにも、今後も容量市場の動きを注視していきましょう。

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