2024.11.27
容量市場・容量拠出金とは? 電気代への影響、目的や仕組みについてわかりやすく解説
将来に向けて、安定的な電力供給を確保するための手段として、容量市場が導入されました。そして、安定的な電力供給をおこなう発電事業者に対して支払う報酬のことを容量拠出金とよびます。 そもそも容量市場とは何か、そして容量拠出金 […]
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2025.01.21
最近よく聞く「エネルギーミックス」。エネルギーの高騰や、供給量の不安定さがニュースとして取り上げられる際に、目にする機会も増えているかと思います。
この記事では、エネルギーミックスが必要な理由と、エネルギーについての日本の課題や取り組む目的、私たちにできることについてわかりやすく解説していきます。
エネルギーミックスとは何か、なぜ必要なのかについて、その基本を確認していきましょう。
エネルギーミックスとは、原子力、石油、石炭、天然ガス、太陽光や水力などさまざまなエネルギー源をバランスよく組み合わせる考え方のことです。
例えば、何か一つのエネルギーに依存していると、万一、そのエネルギーに問題が起こった場合、エネルギーの安定供給は難しくなり、私たちの生活や経済活動にも大きな影響を与えます。
残念ながら、我が国のエネルギー自給率は、主要各国の中でも非常に低い状況が続いています。つまり、日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼っているということです。もし、国際市場において大きな変動があれば、日本は危機的なエネルギー不足に陥ることは想像に難くありません。
ロシアによるウクライナ侵攻の際に、エネルギー価格が高騰したことは記憶に新しいかと思います。ロシアは、化石燃料や天然ガスの保有量、輸出量がとても大きかったため、世界のエネルギー情勢は大きく混乱しました。
世界中が不安定、不透明な現状において、少しでもリスクを分散し、安定的なエネルギー供給を実現するためにエネルギーミックスはとても重要なのです。
主要国の一次エネルギー自給率比較(2021年)
我が国のエネルギー自給率
また、複数ある発電方法にもそれぞれメリットデメリットが存在しています。
例えば、現状の日本では、約7割の発電を火力発電に依存していますが、火力発電に依存せざるを得ない理由もあれば、当然ながらデメリットもあります。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁 2024年3月 統計表一覧 発電実績より作成
詳しくは、こちらの記事をご参照いただければと思いますが、下記に各電源のメリットとデメリットをまとめていきます。
発電方法 | メリット | デメリット |
火力発電 | ・安定した電力供給 ・需要に合わせて供給量を増減可能 ・狭い土地でも発電所が建設可能なうえ、コストが低く工期が短い |
・燃焼過程で二酸化炭素や有害物質を排出 ・火力発電の原料を海外からの輸入に依存 |
水力発電 | ・発電効率が80~90%と高い ・安定的に電力の供給が可能 ・需要に合わせて供給量を増減可能 ・温室効果ガスの排出がない |
・環境破壊 ・大規模な水力発電はすでに開発済み |
原子力発電 | ・安定的に大量の電力を供給可能 ・温室効果ガスの排出が少ない |
・事故の危険性。万一事故が発生した際の放射性廃棄物の処理問題 |
太陽光発電 | ・設置後は燃料が不要 ・温室効果ガスの排出がない ・屋根や広大な土地等、多様な場所に設置可能 ・比較的安価な発電コスト |
・天候や日照条件に大きく依存し安定的な電力供給が難しい ・発電効率が約20%程と低い |
風力発電 | ・設置後は燃料が不要 ・温室効果ガスの排出がない ・夜間でも発電が可能 ・陸上だけではなく洋上風力も可能 |
・風の安定した地域でないと効率的な発電ができない ・生態系や景観に影響を与える |
バイオマス発電 | ・安定した電力供給 ・廃棄物の有効活用が可能など、地球にやさしい発電方法 |
・コストがかかる ・安定的な燃料確保が困難 |
水素発電 | ・温室効果ガスの排出がない ・エネルギー効率が非常に高い |
・爆発の危険性 ・コストが高い ・技術・インフラ整備が未発達 |
地熱発電 | ・安定した電力供給 ・純国産のエネルギーが利用可能 |
・開発コストが高い ・開発に時間がかかる |
これらの電源(エネルギー)の違いを把握した上で、デメリットを最小限に、メリットを最大限にできるように組み合わせていくことが求められているのです。
では、日本のエネルギーミックスの特徴を見てみましょう。
日本におけるエネルギーミックスの基本方針は「S+3E」です。
「S+3E」とは、下記の4つの英単語の頭文字から組み合わされており、これらを同時に実現することが日本のエネルギー政策の基本的な方針です。
・Safety(安全性)
・Energy Security(安定供給)
・Economic Efficiency(経済性)
・Environment(環境)
Safety(安全性)は、日本のエネルギー政策において、最も重要視されています。2011年に起きた福島第一原発の事故以降、日本の原子力発電の安全性の基準について再評価がおこなわれました。
人々の生命と健康を重要視すること、そして事故のリスクを低減させることを目指して、より厳格な規制が導入。発電所の耐震設計や緊急時の対応計画などが見直されました。
エネルギーの大半を輸入に頼っている日本では、エネルギーを確実に、安定的に供給するために、下記のリスクに対する取り組みが必要です。
・地政学的リスク
前述したウクライナ侵攻によるリスクはまさに地政学的リスクです。ほかにも、中東情勢による石油輸入の不安定化や、南シナ海における領有問題による航路の制限など、地政学的なリスクは多方面で起こっています。
・自然災害
東日本大震災による福島第一原発の事故など、自然災害を起因としてエネルギーの供給に影響が起こることも増えています。近年では豪雨なども発生しており、台風の影響で石油施設が破壊されることも懸念されています。
・資産価格の変動
OPECや原油国の戦略が変更されたり、経済動向によっては原油の需要が変化したりと、エネルギー価格の高騰はエネルギーの安定供給の大きなリスクです。
さまざまな課題が絡み合う中、なかなか簡単にはいかないですが、エネルギーの安定供給のためには、多様なエネルギーを確保し、国際的な協力体制を強化するとともに、戦略的にエネルギーの備蓄をしていくことが求められています。
エネルギーを安定的に供給することができても、その料金が高騰し続けていたら私たちの生活は立ち行かなくなってしまいます。
そのため、限られた資源を最大限に活用し、効率的に電力を使うために、電力インフラを改善したり、エネルギー貯蔵技術の開発を進めたりと、電気を国民に提供することが必要になっているのです。
エネルギーが安価に安定的に供給されていたとしても、それが環境を破壊し続けているとしたら、持続可能な社会の実現はできません。
そのため、二酸化炭素などの温室効果ガスや大気汚染物質の排出、森林伐採などによる環境破壊などによる影響も考えなくてはいけません。現状のまま、火力発電重視の電源構成では二酸化炭素排出量の目標は達成できません。
そこで環境に配慮した再エネ(再生可能エネルギー)の推進や、省エネ技術の開発や普及が重要視されています。
発電から消費に至るまで、私たちは環境に配慮した取り組みをますます求められるようになってきているのです。
日本では、前述した「S+3E」の基本方針のもと、エネルギー政策が進められています。
2021年に岸田内閣のもとで閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、2030年度までのエネルギーに関する目標が定められています。
エネルギーミックスが注目されるきっかけは、1973年のオイルショックです。第4次中東戦争を発端とし、原油価格が急激に高騰、当時石油への依存度が高かった日本は大きな影響を受けました。そこから、一つのエネルギーに依存するのではなく、多様なエネルギー源を模索する新たなエネルギー政策を打ち出すことになりました。
また、2011年の東日本大震災での福島第一原発の事故は、エネルギー政策において「安全性」に対する意識を新たにする大きな転機となりました。
事故前の2010年度の電源別発電電力量の割合は、
LNG:29%
石炭:28%
原子力:25%
石油等:9%
水力:7%
地熱及び新エネルギー:2%
となっていましたが、事故の後、原子力発電所は順次停止、2014年度には、原子力はまったく使われなくなりました。
発電電力量の推移
福島第一原発事故後のエネルギー基本計画の方針では、原発依存の低減や安全優先について掲げ、これまで原子力でまかなっていたエネルギーは、主に火力発電を稼働させることでまかないました。老朽化のため停止していた火力発電所を再稼働させたり、設備を新しくし発電効率を高めたりと、安定供給のために稼働させていった結果、2010年当時66%だった火力発電の割合は、2014年度には88%にまで増えてしまいました。
この割合は、1973年時のオイルショックの際の化石燃料への依存よりも高い数値(80%)です。
これらの出来事が、特定のエネルギーへの依存を減らすエネルギーミックスの重要性が注目されるきっかけとなりました。
日本は、第6次エネルギー基本計画において、2030年度に二酸化炭素を2013年度比で46%削減、さらに50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標(2021年4月表明)と、2050年カーボンニュートラル(2020年10月表明)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことを重要テーマとして掲げています。
日本政府は、2030年度に向けて下記のようなエネルギーミックスを提唱しています。
電源構成
再エネ 36~38%
水素・アンモニア 1%
原子力 20~22%
LNG 20%
石炭 19%
石油等 2%
うち再エネの内訳は、下記の通りです。
太陽光 14~16%
風力 5%
地熱 1%
水力 11%
バイオマス 5%
これを実現させるため、3Eを下記のように設定しています。
安定供給:エネルギー自給率を30%程度(旧ミックスは約25%程度)
環境:温室効果ガス削減目標のうちエネルギー期限CO2の削減割合を45%程度(旧ミックスは約25%程度)
経済効率性:コストが低下した省エネの導入拡大や化石燃料の価格低下が実現した場合、電力コストを8.6~8.8兆円程度(旧ミックスは9.2~9.5兆円)、kWhあたり9.9~10.2円/kWh程度(旧ミックスは9.4~9.7円/kWh程度)
政府は上記計画を実現するため、徹底した省エネを追求するとともに、再エネの主力電源化に向けて最大限の導入を目指しています。
世界とともに脱炭素化へと舵を切った2015年のパリ協定以降、温室効果ガスの排出量が多い火力発電への依存度を下げることが、日本における課題の一つです。
解決方法として、再エネの導入が期待されているものの、欧州などの先進国と比較するとその割合はいまだ低い状態が続いています。
エネルギーの安定供給と、脱炭素化の両立を、経済効率性を維持しながら、いかに実現させるかが現在の日本における課題点といえるでしょう。
日本は、2050年にカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを意味しており、気候変動問題に真正面から取り組むための重要なステップです。
カーボンフリーとは?
企業視点でカーボンニュートラルとの違いと意味を理解する
第6次エネルギー基本計画では、2050年に向けて温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みが重要としています。
●電力部門
再エネ・原子力など実用段階にある脱炭素電源を活用しながら、アンモニア発電やCCUS/カーボンリサイクルによる炭素貯蔵・再利用を前提とした火力発電などのイノベーションを追求
●非電力部門
脱炭素化された電力による電化を進める。特に産業部分に置いては、水素還元製鉄や人工光合成などのイノベーションが不可欠
つまり、再エネは主力電源を優先しながら比率を高めるため最大限取り組み、水素・CCUSなどの新しい技術は社会への実装を進めていくという方針ということです。
また、現在では第7次エネルギー基本計画の策定が始まっています。今後も最新の情報を注視していきましょう。
日本は、エネルギーミックスの実現に向けて多くの課題に直面しています。エネルギー自給率の低さや、化石燃料への過度な依存など、深刻な問題点が残されています。
2030年はすでに遠い将来の話ではありません。リミットが間近に迫る中、期待されているエネルギーは再生可能エネルギーです。しかし、再エネの導入量を急激に増やすことは現実的ではありません。
また、政府の掲げるエネルギーミックスのうち20~22%を目指す原子力発電の稼働には、原子力に対する否定的な意見が多く稼働再開は困難です。
日本のエネルギーの課題にとって、再生可能エネルギーと、原子力発電への向き合い方は、大きなカギとなることでしょう。
そして、今後も外部要因によるエネルギー確保へのリスクはさらに高まり続けることが予測されています。
これらの課題は、私達一人ひとりの生活だけではなく国家の安全保障上でも非常に大きな課題となっています。
このままのペースでは、2030年、2050年の目標達成は難しいと言われています。
エネルギー問題は、単なる供給の問題にとどまらず、環境や経済、そして社会全体にも深刻な影響を及ぼします。この難しい問題に対し、明確な解決策が見いだしにくい現状ではありますが、目標の実現には、行政、企業、家庭、そして地域社会が協力し合い、一体となって取り組むことが極めて重要ではないでしょうか。
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