2024.09.05

省エネ法改正で注目!非化石エネルギーと非化石証書の基礎知識

 

2023年度の省エネ法の改正により、非化石エネルギーがこれまで以上に注目を集めています。

省エネ法では、すべてのエネルギー使用の合理化が求められるようになり、非化石エネルギーも報告対象となりました。

1.非化石エネルギーとは?基本概念と定義

そもそも「エネルギー」というと、従来では化石燃料のことを指していました。しかし、改正された省エネ法ではエネルギーの定義を拡大して、「化石エネルギー」だけではなく「非化石エネルギー」も含めたすべてのエネルギーの使用の合理化を求めるようになったのです。

非化石エネルギーとは、「従来のエネルギー」である、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を使用せずに得られるエネルギーの総称です。非化石エネルギー源には、黒液、木材、廃タイヤ、廃プラスチック、水素、アンモニアなどが含まれます。



出典:資源エネルギー庁 

省エネ法の目的とは

2.改正省エネ法と非化石エネルギー

2050年のカーボンニュートラル目標や、2030年の温室効果ガス削減目標に向けて、国を挙げて省エネへの取り組みが強化されています。
実現させるためには、省エネだけではなく、非化石エネルギーの導入拡大が欠かせません。

出典:資源エネルギー庁 

そのため、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換を目指すために、2023年に省エネ法(正式名称:エネルギーの使用の合理化および非化石エネルギーへの転換等に関する法律)が改正されました。非化石エネルギー転換目標は、業種によってその特徴に応じた内容となっていますが、全業種を通して、2030年度の外部調達の非化石比率は59%にする、という方向性は統一されています。

非化石エネルギーへの転換は、日本だけではなく、世界各国で取り組みが進んでいます。
2023年4月に開催された「G7気候・エネルギー・環境大臣会合(G7札幌)」では、2050年の温室効果ガスのネット・ゼロ排出に向けて、省エネの役割を「第一の燃料」として強調され、脱炭素化への動きについて合意文書に盛り込まれました。

G7札幌 機構・エネルギー・環境大臣会合

脱炭素化社会とは

カーボンニュートラルとカーボンフリーの違いとは

2.1.省エネ法改正にともなう非化石エネルギーの報告

前述の通り、2023年に改正された省エネ法では、すべてのエネルギー使用の合理化が求められるようになりました。それにともない、従来の化石エネルギーに加え、非化石エネルギーも報告対象に変更されています。

また、改正された省エネ法では、非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期計画を作成し、非化石エネルギーの使用状況などの定期報告をおこなうことが必要になりました。

弊社では、専門のコンサルタントが省エネ法・各種条例に関する書類作成を支援し、法令に則ったエネルギー管理をサポートしております。

省エネ法・各種条例コンサルティング

3.化石エネルギーと非化石エネルギーの違い

化石エネルギーは、化石燃料を使用したエネルギー源のことで、
非化石エネルギーは、化石燃料以外のエネルギー源のことです。

化石エネルギーである石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を使用してエネルギーを得ると、燃焼時に大量の温室効果ガスを排出します。また、埋蔵量が限られていることも特徴の一つです。

一方で、非化石エネルギーは有限な化石資源を使用せず、エネルギー自身がもっている熱や動力によって発電しています。原子力発電や、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど)が非化石エネルギーに含まれます。持続可能であるため、温室効果ガスの排出を最小限に抑え、地球温暖化の対策においても重要な役割を果たすことは非化石エネルギーの大きなメリットといえるでしょう。

4.再生可能エネルギー(再エネ)と非化石エネルギー

再生可能エネルギー(再エネ)には、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの非化石エネルギーが含まれます。

下記の記事に、再生可能エネルギーの役割についてまとめておりますので、あわせてご覧ください。

●カーボンフリーとは?(風力発電・水力発電・地熱発電・太陽光発電について説明)

●バイオマス発電とは

5.非化石証書とその概要

非化石証書とは、再生可能エネルギーをはじめとする非化石エネルギー源から発電された電力の「非化石価値」部分を証書化したものです。

非化石証書がスタートするきっかけは、FIT制度でした。
FIT制度とは、固定価格販売制度の略です。

FITは、「再生可能エネルギー」を広く普及させることを目的とした制度で、太陽光発電に代表される、地球を汚さないクリーンで無尽蔵なエネルギーの使用を広げようと設けられたものです。
このFITは、「再生可能エネルギーを作り出した場合、その買取価格を10年~20年(種類と規模によって異なる)の期間にわたって、政府が定めた一定の価格に維持することを約束する」という固定価格買取を政府が保証するもので、固定買取期間は、10kW未満の場合は10年、10kW以上の場合は20年です。”

用語集 FIT より


非化石証書は、環境にやさしい電力を利用したい、温室効果ガス排出量を減らしたい、という需要に対し、もっと省エネ電力の環境価値を高めるため、非化石電源の価値自体を証書化し、オークション形式で入札できるようにしたものです。

2021年11月からは、企業などの需要家でも取引が可能になり、非化石証書のニーズがさらに高まりました。

6.非化石証書の種類

非化石証書には3種類あります。

・FIT非化石証書
・非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
・非FIT非化石証書(再エネ指定なし)

6.1.FIT非化石証書

FIT非化石証書は、FIT制度の対象となる再エネ電源の環境価値を証書化したもののことです。
FIT制度の対象となる再エネ電源は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどを指します。

6.2.非FIT非化石証書(再エネ指定あり)

非FIT非化石証書は、FIT制度の対象とならない電源を証書化したものです。さらに再エネ指定のあり・なしでさらに分けられます。
FIT制度では認められていないものの、環境負荷の少ないエネルギーを「再エネ指定あり」と区分されているのです。例えば卒FITした再エネや大型水力発電などが含まれます。

6.3.非FIT非化石証書(再エネ指定なし) 

前述のFIT制度の対象とならない電源を証書化したもの(非FIT非化石証書)のうち、再エネの指定がないものを指します。
再エネ指定していないものは、原子力エネルギーなどがあります。
再エネ指定がないものを購入しても「再生可能エネルギーを導入した」という扱いにはなりません。

7.非化石証書の活用

非化石証書を活用することで、いくつかのメリットがあります。
まず、最大のメリットは、非化石証書を活用した電気を購入すると「実質的にCO2排出の少ない再生可能エネルギーの電気」を使っているとみなされることです。

2022年度では、日本の約83.5%は化石エネルギーに依存しています。世界的に、非化石エネルギーへの転換が進められている中、化石燃料比率の削減を進めていくことが求められています。

日本の一次エネルギー供給構成の推移

出典:資源エネルギー庁 日本のエネルギー2023年度版

また、エネルギー供給構造高度化法において、小売り電気事業者に対して、2030年度までに非化石電源比率は44%以上にするよう求められており、この目標の達成のために非化石証書を使うことができます。

8.非化石エネルギーに関連する用語

8.1.非化石証書と、J-クレジット・グリーン電力証書

環境問題への取り組みを示す証書として「非化石証書」を紹介しましたが、ほかにも

・J-クレジット
・グリーン電力証書

があります。

8.1.1.J-クレジット

J-クレジットは、省エネ機器の導入など、温室効果ガスの排出の削減や吸収量をクレジットとして国が認証する制度のことです。再生可能エネルギーによる発電だけではなく、設備の導入や適切な森林管理など幅広く認証されます。
また、J-クレジットは売却可能です。

8.1.2.グリーン電力証書

グリーン電力証書とは、太陽光・水力・風力・地熱・バイオエネルギーの再生可能エネルギーによって発電された電力の「環境価値」を証書化したものです。相対取引で売買されています。
特定の基準を満たした発電設備によってグリーン電力価値が取引された、と「公平な立場の機関」が認証している証書のため、売却はできません。

8.2.非化石証書と相性のよい蓄電池の活用例

蓄電池は再生可能エネルギーの一時的な蓄積と供給を可能にし、電力需要のピーク時にエネルギーを供給するための重要な役割を果たします。
また、蓄電池を使用することで昼夜のエネルギー供給の不安定さを補い、安定した電力供給が実現されます。非化石証書を取得したエネルギーを蓄電池に蓄え、必要な時に利用することで、再生可能エネルギーの利用効率を最大化できます。

企業はエネルギー消費の最適化とCO2排出量の削減を図るとともに、環境報告書やCSR報告においても積極的にアピールすることが可能です。この組み合わせは持続可能なエネルギー管理の実現に貢献します。

9.まとめ

2023年に改正された省エネ法により注目された非化石エネルギー。報告の方法など細かい変更点も多く、達成のためにはどのようなことが効果的なのかを見直す必要があるかもしれません。

弊社では、専門コンサルタントが報告書の作成だけではなく、どのように目標を達成していけばよいのかについてもサポートしております。

また、補助金も活用可能なケースもございますので、お気軽にお申し付けくださいませ。

省エネ法・各種条例コンサルティング

省エネ補助金コンサルティング

関連コラム

COLUMNS

お問合わせはお電話かメールにて承ります。
お気軽にご連絡ください。

0120-60-9444

10:00~12:00、13:00~17:00

※土日祝を除く